心不全について

患者さん・家族を含めたチーム医療で
心不全パンデミックに立ち向かう

近年急増している心不全。
社会全体の高齢化に伴い、今後もさらなる増加が予想されます。
患者さん一人ひとりが病状を受け入れ、
自分らしく生きていくために
当院が取り組んでいる支援体制について
循環器内科の松成先生よりお話を伺いました。

循環器内科

松成 政良 副部長

生まれは長崎、育ちは静岡。浜松赤十字病院などを経て、2021年より当院着任。忙しい毎日の中、家庭では2児の良きパパとしてお子さんの習い事の送迎もこなしているそう。「日々頑張る子どもたちの成長を、頼もしく見守っています」

教えてドクターQ&A

入院中の心不全の治療について教えてください。
 心不全は就寝中に悪化しやすいため、夜間の急な息苦しさなどで救急搬送されるケースが多く見られます。症状によりますが、当院の場合入院期間は2〜3週間。初期は急性期治療として血圧・心拍の安定化を最優先とし、必要に応じて心筋梗塞や不整脈などの原因検索も進めます。入院時の症状や心不全の重症度に応じて治療方針を決定し、症状が落ちついたら内服薬へ移行、退院後を見据えた支援へとつなげていきます。

 
心不全治療におけるチーム医療はどのようなものですか。
 当院では入院中から、退院後を見据えた多職種支援を重視しています。薬剤師は薬の服用指導に加え、副作用や服薬遵守のリスクを確認。管理栄養士は水分・塩分の制限など、心不全管理に即した食生活や調理法を提案します。リハビリ室では理学療法士・作業療法士の指導の下、病状に応じた運動療法を実施。負荷に対する呼吸・心拍反応を観察しながら、安全に運動を続けるための指標を明確にします。また入院後期は自己管理スキルの定着と生活習慣の再構築が目標。看護師は「心不全手帳」(図2)を用いた記録方法を指導し、早期発見の目安を教育。また独居や老老介護のケースでは、必要に応じてソーシャルワーカーが社会的支援の調整を行っています。
 

高齢者急増で懸念が広がる心不全パンデミック

 新聞やメディアなどで、最近「心不全」という言葉を目にする機会が増えてきました。
心不全とは、心筋梗塞や不整脈、弁膜症、心筋症などの疾患により心臓のポンプ機能が低下し、肺や全身に水が溜まって息切れやむくみなどの症状が現れ、生活の質に大きな影響を及ぼす心臓病の最終的な状態を指します。最終病態であるため完治は難しく、ポンプ機能を改善する治療を行いながら、心不全とうまく付き合っていく必要があります。
 日本では人口が減少する一方で、65歳以上の高齢者の割合は増加しており、それに伴い心不全の患者数も急増。今後もさらに増えると推定されています(図1)。これがいわゆる「心不全パンデミック」です。入院医療が必要な高齢の心不全患者さんが増えることで、病院の対応が困難になったり、医療費の増大といった社会的課題に発展する可能性もあります。心不全はもはや他人事ではなく、私たちの身近な問題となってきています。

心不全との向き合い方をチーム体制でサポート

 心不全と向き合うには、薬による治療に加えて、水分や塩分の制限、体重管理など日常生活での注意や努力も欠かせません。そこで当院では、入院中に正しい知識を身につけていただくため、患者さんやご家族に「心不全手帳」をお渡しし、看護師や薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士などが連携するチーム医療体制を整えています。また「心不全パス」と呼ばれる電子カルテ上の共通ツールを活用し、どのスタッフが関わっても医療の質が保てるよう取り組んでいます(図3)。

再発を防ぐ努力と共に人生観を見つめ直す機会を

 心不全は入退院を繰り返すほど生活の質や寿命が低下することがわかっています。そのため、退院後も学びを生かし、心不全手帳を活用しながら、患者さんと医療者が共に注意と努力を重ねることで、再入院を防ぎ、より良く心不全と付き合えるよう努めています。
 ただ、どれほど注意や努力をしても、入退院を繰り返し、命を落とす場合もあります。そこで心不全と診断された時点から、自身の人生観や価値観を見つめ直し、今後どのように生きたいかをご家族で話し合う「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」の実施についても積極的に呼びかけています。
図2 心不全手帳 第3版
図3 心不全手帳 第3版より pp8‐9
 
図3 心不全手帳 第3版より pp12‐13