肺がん治療について

区域切除やロボット支援下手術、
より低侵襲化が進む肺がんの外科治療

早期肺がんに対して根治を目指して行われる手術治療は、近年大きく変化。
新たに標準治療となった区域切除、話題の手術支援ロボットなど、
患者さんのQOLに配慮したさまざまな選択肢が増えています。
 

呼吸器外科

 医師 早川 貴光 副部長

県内全域にて広く外科医療に携わったのち、2024年4月より当院呼吸器外科副部長に着任。すらっと長身でスタイル抜群、さぞ食事に気を使っているのではと思いきや、実は大の甘党だそう。「清水『草里』のクレープ包みがおすすめです!」

教えてドクターQ&A

肺がんとはどんな病気?
 気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものを肺がんと呼びます。主な種類に、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんがあります(図1)。がんは肺にとどまっている状態では症状がないのですが、そのままにしておくと周りの組織を壊しながら増殖、血液やリンパ液の流れにのって他の部位に転移することも。男性・喫煙者に多いイメージがありますが、喫煙歴に関係なく発症する肺がんもあり、特に肺がんの60%を占める腺がんは女性にも多く、注意が必要です。
予防する方法はある?
 残念ながら有効な予防法はないのですが、まずはタバコを吸わないこと、喫煙している人はすぐにでも禁煙してください。
 肺がんは自覚症状がないため、不調に気づいて検査して初めてがんが判明した時にはすでに進行していることが多いのですが、早い段階で発見できれば手術によって生存率を上げることができます。早期発見のため、40歳以上の方は1年に1回必ず検診を受けましょう。
 
手術後の生活が心配。今まで通りの生活はできますか。
 小さいながらも傷はあるため手術後1ヶ月ほどは注意が必要ですが、基本的には普段通りの生活を送ることが可能。これまで通り仕事や家事もできますし、食事やスポーツ、飛行機を使った旅行も楽しめます。ただし、禁煙は継続してください。
 

呼吸機能を損なうことなくがんを切除できる縮小手術

 比較的早期の肺がんに対して、選択肢のひとつとなるのが手術治療。ここ数年で肺がんに対する手術は大きく変化していて、代表的なものに縮小手術と低侵襲手術が挙げられます。
縮小手術とは、肺の切除範囲を従来よりも小さくした手術のこと。
 人間の肺は、右肺は3つ、左肺は2つの大きな部屋(肺葉)に分かれていて、以前はこの大きな部屋を丸ごと摘出する肺葉切除が標準手術とされていました。しかし、国内で行われた大規模臨床試験の結果として、3センチ以下の肺がんに対しては大きな部屋の中のいくつかの小部屋だけを切除する区域切除が2年前より標準手術に加わっています(図2)。
 区域切除は肺葉切除と比べて手術はやや複雑になりますが、肺がんの治る確率を落とすことなく呼吸機能を温存できるという利点があります。区域切除が行えるかどうかは、がんの大きさや位置、性質によりますが、術後の生活をよりよいものにするため、当院では適応がある場合は積極的に区域切除を提案しています。
 

手術支援ロボットの登場で負担の少ない手術が可能に

 一方低侵襲手術は、手術の創(傷あと)ひとつひとつを小さくして身体への負担を軽減した手術のこと。特に近年手術の低侵襲化を後押ししているのが、全国で普及しつつある手術支援ロボットです。
手術支援ロボットは当院にも昨年導入され、すでに婦人科や泌尿器科領域でロボット支援下手術を行なっており、呼吸器外科でも導入の準備を進めています。
呼吸器外科でロボット支援下手術の対象となる疾患は、肺がんを含む肺腫瘍と胸腺腫などの縦隔腫瘍です。従来行われてきた胸腔鏡補助下手術や胸腔鏡下手術も、身体への負担は比較的少ないものですが、これらに加えて治療の選択肢が増えることは患者さんにとっても医療者側にとってもメリットが大きいと考えます。
 
 当院ではこのように、より安全で低侵襲な手術を提供できるよう努力しています。私個人が目指すのは、患者さんにとってわかりやすい医療です。難しい専門用語はなるべくかみ砕いて、内容はぼやけないようにはっきりと、理解しやすい病状説明を心掛けています。胸部の異常を指摘されたときは、ぜひ当院にご相談ください。