総合病院の精神科について

「病の中でも、自分らしく」総合病院において精神科が果たす役割

身体の不調に伴い、不安や落ち込みなど
心理面で大きなダメージを受けることは少なくありません。
一人ひとりの患者さんが、病のなかでも
自分らしく安心して治療に向き合うために
総合病院の精神科にはさまざまな役割が求められています。

精神神経科

長谷川 花 部長
 

2024年4月に着任した長谷川先生、優しい笑顔と明るく穏やかな話しぶりが印象的です。趣味はダイビングで、静岡では西伊豆がお気に入り。取材当日も可愛らしい海の生き物が描かれたカラフルなシャツを着こなすなどチャーミングな一面も!

教えてドクターQ&A

「気分障害」とはどんな病気ですか。
 
 代表的なものにうつ病や双極性障害が挙げられます。うつ病とは、抑うつ気分などにより趣味ができなくなったり、食事や睡眠などあたりまえの生活ができない状態が長く続く症状のこと。また双極性障害とは、気分が異様に高揚し、活動的になる躁状態とうつ状態を交互に繰り返す病気のことです。うつ病は誰でもかかる可能性があるという意味で、以前は“心の風邪”と例えられましたが、病気と共に人生を歩むので、風邪よりも重く、時に重篤化することもあります。しかし、きちんと治療を続けることで自分らしい人生を送ることは可能です。
 
当院のリエゾン診療について教えてください。
 「リエゾン」とはフランス語の「liaison(つなぐ、連携する、橋渡しをする)」に由来する言葉で、精神科の知識を必要な人につなぎ、患者さんをケアする活動を指しています。元々身体疾患で入院した患者さんでも、治療の過程で精神面での不調が問題となるケースは少なくありません。当院では日頃患者さんに接することの多い看護師、精神保健福祉士、精神科医がチームとなり、それぞれの専門性を発揮しながら、精神的、社会的に困難な状態にある患者さんを支えています。
 

多彩な役割が求められる総合病院の精神神経科

 2020年の厚生労働省の調査によれば、日本で一般病院と呼ばれる総合病院は7179施設あり、うち精神科を標榜しているのは1763施設。これら精神科はさらに有床と無床に分かれ、当院は無床総合病院精神科に当たります。当院の中で精神神経科が果たす役割は、地域から受ける外来診療、院内のコンサルテーションとリエゾン(右ページQ&A参照)、緩和ケア、地域の精神科病院との連携、スタッフのメンタルヘルスケア、院内や地域のメンタルヘルスの啓発・連携など多岐にわたります。

入院治療中の精神的不安をチーム体制でサポート

 外来診療について2024年7月の診断内訳を図に示します(下図)。最も多いのは気分障害圏です。うつ病や双極性障害の方が大半を占め、主に薬物療法と本人の生活スタイルに合わせた精神療法を行っています。全体では、当院で身体疾患も治療されている方がほとんどです。
 リエゾンでは看護師・精神保健福祉士・精神科医がチームとなり回診を行っています。入院治療中にせん妄(夢と現実が混ざり混乱する状態。身体疾患などが原因で起こる)を生じた方や入院後にうつ病などが疑われる方、元々精神疾患をもたれて入院治療中の方などの精神的ケアや自殺企図後のケアを行います。
 緩和ケアでは医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・事務員などでチームを組み、カンファレンスや回診を行っています。精神科医にできることは限られますが、不安や気持ちのつらさ、不眠など精神面のサポートに携わっています。
 

病を持っても最期の時まで自分らしく過ごせるように

 病気は予防できれば一番よいのですが、どんなに気をつけていても病気になる時は誰にでも訪れます。大切なのは、いざ病気になった時の備えや対処。特に精神疾患は自分で気づくことが難しく、生活への支障も大きくなります。また、まだ偏見も強く、病を持ったことで仲間を失ったり自分が許せなくなったりと、二重三重の苦しみを負う方も多くおられます。悪いのは病気ですから、勇気を持って治療に繋がっていただきたいと思います。
 さらにがんをはじめとする重篤な身体疾患では、精神力は治療を乗り切る原動力にもなります。身体疾患の治療には、メンタルヘルスを保つことも重要です。一精神科医にできることは本当に小さく限界がありますが、つかの間でも支援の姿勢を保ち続け、病を持つ皆様が最期まで自分らしく過ごせるよう、お力になれればと思っています。