臼蓋形成不全症

股関節骨切り術(自骨手術)

3つの特長

  1. 低侵襲な寛骨臼回転骨切り術(SPOあるいはCPO)
  2. 小さく目立ちにくい手術のきずあと(皮膚のしわと同じ方向)
  3. 筋肉を切らない進入法

手術を受けられた以降も定期健診を行い、術後も責任をもって一人一人の患者さんを見ます。

1:低侵襲な寛骨臼回転骨切り術

  臼蓋形成不全症の患者さんの場合、多くの例では寛骨臼回転骨切り術(CPO、SPOなど)を施行します。症例によっては、骨盤から採った骨を臼蓋の足りない部分に移植する方法などで済む場合もあります。患者さんの年齢や関節の状態によって、患者さんと相談しながら治療法を決めます。寛骨臼回転骨切り術にはRAO、CPO、SPOなどの手術があります。どの手術も骨盤を臼蓋の形に沿って球形にくり抜くように骨切りし、臼蓋の不足している部分を覆うように回転移動させて新しい臼蓋を作る術式です。まだ関節軟骨が残っている関節症の患者さんが対象です。

  寛骨臼回転骨切り術はRAOと呼ばれる手技が最もポピュラーです。RAOと同様の目的で行われる手術にSPOやCPOがあります。SPOやCPOは、RAOに比し患者様の身体に与える侵襲(負担)が少ない低侵襲な寛骨臼回転骨切り術です。RAOでは横から殿部にかけて20〜30cm程度の皮膚を切開するのに対し、SPOやCPOでは股関節前面に7〜9cm程度の皮膚を切開します。また筋肉への負担もRAOに比べSPOやCPOではかなり少なくなっています。

  SPOとCPOは骨の切り方が異なります。手術では、骨を切る部分を露出するため、骨から筋肉を剥がします。CPOでは骨盤の内側に付着する内閉鎖筋という筋肉の付着部を一部剥がします。SPOでは、筋肉を剥がす範囲がCPOに比し少なくなります。 組織にやさしい低侵襲(身体に与える負担が少ない)な手術方法としてCPOは知られていますが、SPOはさらに低侵襲な手術です。また、イラストでわかるように、CPOでは股関節自体が内側(身体の中心寄り)にシフトし産道の形が変わりますが、SPOでは産道の周囲の骨が途切れず連続しており骨盤が安定していることが分かります。 SPOではより正常に近い股関節を作ることができます。しかし、全ての症例でSPOがCPOより優れている訳ではありません。当院では患者様の骨の状態でSPOとCPOどちらの手術法がよいか判断し使い分けています。8割の症例でSPOを2割の症例でCPOを行っています。

2:小さく目立ちにくい手術のきずあと(皮膚のしわと同じ方向の傷跡、傷口)

患者さんの体型や股関節の変形の程度によりますが、寛骨臼回転骨切り術(CPO,SPO)の手術の傷は7〜9cm程度です。一般に手術の傷は皮膚のしわと同じ方向に作った方が、綺麗に目立ちにくくなおることが知られています。CPOやSPOでは、通常、皮膚のしわと交わる方向に傷が作られることが多いですが、われわれは女性患者さんの90%以上の方に皮膚のしわと同じ方向に傷を作っています。傷が小さいだけでなく整容面でも目立ちにくく綺麗になおることが期待できます。
ただし、男性の患者さんや女性の患者さんでも体格や変形の程度により、通常通り皮膚のしわと交わる方向に傷を作ることがあります。
     寛骨臼回転骨切り術後5週
     皮膚のしわと同方向の傷跡・傷口
     (傷跡周囲の黒は手術時に使用したマジックによるものです)
 寛骨臼回転骨切り術後5週
 皮膚のしわと同方向の傷跡・傷口

3:筋肉を切らない進入法

当センター長の西脇医師は、2012年に骨切り手術用の筋腱を切離せずに温存する低侵襲な進入法(皮膚のどこを切って、どうやって骨を露出させるか)を開発し、縫工筋内側筋間進入法として発表しました。
SPOやCPOのオリジナルの進入法では、骨切り部を露出するために、浅層にある筋肉を部分的に切離し、表層の骨も一部切離して本来の骨切り部を露出します。
西脇医師の開発した縫工筋内側筋間進入は、進入位置に工夫をおこない、表層にある骨を切らずに、かつ浅層の筋も完全に温存して骨切り部を露出する方法で従来のオリジナルの進入法より、さらに低侵襲であると考えられています。最近では、SPOやCPOの手術時に西脇医師の開発した縫工筋内側筋間進入法を取り入れる医師も増えています。