しずおか日赤メールマガジン

第79号 平成24年03月01日発行


 空き地の片隅で「つくし」が顔を出しているのを発見しました。少しずつ春の兆しが見え始めましたね。アスファルトに覆われた街中では、「つくし」を見つけるのはなかなか難しくなってしまいました。近年の自然現象といえば・・・花粉症から春を感じ始める人も多いのではないでしょうか?
 さて、メールマガジン第79号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
糖尿病の最近の話題
新しい薬「インクレチン」と新しい検査法「持続血糖モニターCGM」の登場

2. インフォメーション
あれから一年  
~東日本大震災~

新しい薬「インクレチン」と新しい検査法「持続血糖モニターCGM」の登場
糖尿病・内分泌代謝科部長 村上 雅子


画期的な薬?2型糖尿病の新しい治療薬:「インクレチン」とは?

 私たち日本人の糖尿病患者さんのうち、9割を占める2型糖尿病に対する飲み薬(経口糖尿病薬)は新しい時代に移行しつつあります。消化管ホルモンである「インクレチン」が我々日本人2型糖尿病患者さんにも大変有用であることが注目されて、多くのメディアでも「夢の薬?」と大きな話題になってきております。
 
(1) 「夢の薬?」って本当?しくみは?
 私たちが食事を摂取すると、食物は消化管で消化、分解されブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸といった形になります。このブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸が小腸で吸収されると、小腸の細胞から「消化管ホルモン」が血液中に分泌されて、膵臓にまで届きインスリンの分泌を催促させます。「インクレチン」とは、このように私達が本来持っている、インスリン分泌を後押ししてくれる消化管由来のホルモンの総称です。すなわち食物の消化吸収と共に、この「消化管ホルモン;インクレチ ン」が血液中に増加し、膵臓に働きかけて、食事量や入って来た糖の量に応じてインスリン分泌を催促するのです。
 しかし、この「消化管ホルモン;インクレチン」はせっかく血液中に分泌されても、実際にはその多くは血液中で「DPP4」という名称の酵素で速やかに分解されてしまいます。その結果、分解を受けなかった一部のみが、膵臓にまで届いてインスリン分泌を催促します。
 2型糖尿病の患者さんでは、インスリン分泌が不足していたり、インスリンが効きにくい状態ではありますが、このインクレチンはちゃんと分泌されていますので、せっかく分泌されたインクレチンが、 血液中の酵素「DPP4」で出来るだけ分解されないようにと働いてくれる飲み薬が登場したのです。この飲み薬により、分泌されたインクレチンが分解を受けないため、治療前よりもより多く膵臓にまで届いてインスリン分泌を催促し、血糖が下がる結果が明らかと成りました。その効果は全国の多くの2型糖尿病患者さんで著明に現れ、当院においても同様に多くの患者さんに画期的に良好な結果を現しています。

(2)どんな患者さんに効果が期待できる?
 これまでの治療で複数の糖尿病薬でもなかなか血糖が改善し難くかった患者さんや、特にそろそろインスリン注射を開始する必要が有ると考えられた方々においても、 このお薬が効果を示してインスリン注射治療を必要としなくなる例が後を絶ちません。さらには、従来インスリン治療中の患者さんにおいても、一部の方々では、このお薬を同時に内服することで血糖改善効果があり、インスリン注射の必要量が驚くほど減っていく方々も沢山おられます。ただし、ご自身の膵臓からのインスリン分泌がすっかり認められない方(検査が必要です)や1型の糖尿病患者さんにはこのような作用は期待出来ないので、決して全ての糖尿病患者さんに有効と言う訳では有りません。

 (3) 新たな治療の可能性
 従って糖尿病の患者さんで、「そろそろインスリン注射が必要?」と説明されていた患者さん、「現在治療中のインスリン注射を飲み薬に変えられないだろうか?」と悩んでおられた患者さん方には、このような「インクレチン関連薬」を使う新たな治療の可能性と道が開けて来ています。


新しい血糖検査法が登場:「持続血糖モニター装置:CGM:Continuous Glucose Monitoring」


 糖尿病の患者さんの多くは、 血糖自己測定(SMBG:self-monitoring of blood glucose)を行うことで、インスリン注射や経口糖尿病薬治療中でも、ご自身の血糖がどれほど高いのか、低すぎないのか、ちょうど適切な血糖にコントロール出来ているかどうかの判断が出来ています。しかし1日に2-4回測定することはあっても、測定の頻度には限界があり1日24時間にわたる刻々と動く血糖の変動を細かに把握する事はできません。血糖変動が激しい場合や、夜間の本人には症状の無い低血糖(無自覚性低血糖)などは見過ごされる可能性があるのが実情です。

(1) 持続血糖モニター装置:CGMとは?
 最近、持続血糖モニター装置:CGM(皮下連続式グルコースモニター)という小型の機器が開発され(写真a)、約5分間毎のご自身の血糖値の変化が、連続最長3日間にわたり測定記録され、詳細な変動がグラフ上に一目で確認出来るようになりました。この便利で負担の少ない検査と、解り易い結果が、全国でも大きな反響をよんでいます。

(2)どんな患者さんに検査出来ますか?
 モニター装置:CGMによる検査は、原則として糖尿病専門医の勤務する病院で、必要と診断された場合に可能です。また高価で使い方も患者さん単独では困難 な面もあり、静岡市周辺で本機器があって検査が出来る施設は、現在は当院と2~3の病院に限られています。当院では、個々の患者さんに合う、より適切な薬 やインスリン治療を選ぶ目的で、約1週間前後の入院の上この検査を行って診断と治療に効果を挙げています。

(3)検査の流れ

 比較的簡単で痛み等も無く、機器を装着携帯し、殆どの通常の日常生活をして頂きながら、刻一刻と変動する血糖変動が自動的に記録されていく仕組みです。
① 柔らかい細い糸状の端子(ソフセンサー)を、多くの場合は腹部皮下に刺して固定し、写真の様に手のひらサイズの機器に接続したあとは、携帯電話のように常に携帯して頂きます(写真a、b)。

   
              a:CGM機器                   b:ソフセンサー

② 患者さんの約5分毎の血糖が、最長で3日間まで自動的に記録保存されます。
機器をはずして、主治医とともにパソコンで解析されたグラフを見ます。(写真c)3日間の72時間にわたる血糖変動が、一目で解ります(写真d)。

    
         c:主治医と確認                d:血糖の変動グラフ

 このように、新たな検査機器の導入で、 管理困難な糖尿病患者さんの治療中の問題でもある「夜間や睡眠中などの自覚していない低血糖」「食後に下がらない高血糖」など、従来の検査のみでは見落とし易かった問題点がより解りやすくなります。その結果、より適切で細やかな治療を選ぶ事が可能となりました。また、検査データは、より安心した治療と生活を進める貴重な情報となります。

ー最後にー
 以上、新しい糖尿病薬「インクレチン」や、新しい検査法「持続血糖モニター装置:CGM」の登場で、新たな治療の選択肢と道が開けて来ています。皆さんは、治療を諦めず、見えなかった問題点も新しい検査で明らかにし、新しい時代の治療薬も上手に取り入れて、どうか糖尿病と上手にお付き合い出来るようになって頂きたいと思います。その結果、糖尿病を悪化させず、良くしていく事は可能です。皆さんが恐ろしい合併症を発症しないために、少しでもより良い治療の継続が出来るようにと、私共は日々願って診療しております。



あれから一年~東日本大震災~ 当院の活動記録と今後の備え

 平成23年3月11日14時46分。東日本を襲った大震災からもうすぐ一年がたちます。当院では、発災当日から医師・看護師・薬剤師・事務員などで構成された救護班を派遣しました。釜石市での救護所の設営や、避難所の巡回診療など、その後も活動を続けました。この経験は、今後予想される東海地震への備えとして活かしていきます。 

救護班第1~4班(H23.3.11~3.30)
岩手県釜石市・大槌町
  派遣職員:計34名

★救護班第5~9班(H23.4.3~6.28) 
宮城県石巻市
  派遣職員:計35名
 
★こころのケア要員の派遣
資格を持つ看護師2名が避難所を巡回し、被災者の心配事の相談に対応するなど、こころに寄り添った活動を 行いました。

★石巻赤十字病院業務支援

 石巻赤十字病院は、今回の震災では建物自体に被害はなく、石巻市を中心に周辺地域で唯一機能を果たした病院として多くの患者さんが搬送されました。当院からは、3月から7月にかけて様々な職種の職員計15名を派遣し、業務支援を行いました。

      
       釜石市に診療所を設営                  巡回診療(石巻市立飯野川中学校)


災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)登録

 DMATは、医師・看護師・業務調整員で構成され、大規模な自然災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、迅速に駆けつけ救急治療を行うため、厚生労働省の認めた専門的な訓練を受けた医療チームです。
 当院では、すでに登録済みの1チームに加え、震災後新たに1チームが研修を受け登録されました。今後も更なる体制の強化に努めていきます。

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