しずおか日赤メールマガジン

第76号 平成23年12月01日発行


みなさま、こんにちは。
朝晩の冷え込みも冬本番。体調管理には十分気をつけたいですね。この時期、寒空の下で輝く街のイルミネーションを見ると、つい立ち止まってその輝きを見つめてしまいます。過ぎ去りし一年を振り返ってしみじみした気分になったり・・・クリスマス到来を胸にワクワクした気分になったり・・・。今年も残すところあと一ヶ月となりました。
さて、メールマガジン第76号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
腎臓病について

2. インフォメーション
♪70億人目の赤ちゃん♪が誕生しました

腎臓病について 内科副部長 坂巻裕介

 腎臓は尿をつくる臓器です。「腎臓が悪くなると尿が出なくなる」というイメージをお持ちの方が中にはいると思いますが、「尿が出る、出ない」は「腎臓が良い、悪い」という指標にはなりません。例えば腎機能がある程度保持されていれば、脱水症になると尿は自然と濃くなり少なくなりますし、水を多く飲めばそれなりに尿量は増えるよう調節されます。尿量ではなく、きちんと体の中の毒素(老廃物)を体外に排出できていることが大事ということになります。


慢性腎臓病

  『慢性腎不全(以下、慢性腎臓病;Chronic kidney disease, CKD)』、この病気にかかっている方は、日本腎臓学会の統計によると、高齢化も相まって日本国内にすでに1300万人以上存在すると推定されております(成人の8人に1人に達したことになります)。その罹患率の多さから、国民病とも言われ、社会問題化しているのが現状です。また、腎臓が悪くなると、心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳疾患(脳梗塞、脳卒中)の発症率が増加することもわかってきました。さらに、腎機能が悪くなると、最終的には腎臓の機能を肩代わりする治療(腎代替え療法)が必要となります。献腎(死体腎)移植や生体腎移植が普及していないわが国では、血液をきれいにする(浄化する)治療、血液透析もしくは腹膜透析による治療に頼らなければならず、その選択を余儀なくされる状況が続いております。どのタイミングで透析療法を行うかは、採血の結果だけではなく、全身状態と合わせて慎重に判断していくことになります。また最近では、腎臓の機能がゼロに近づく前に、つまり悪いなりにも残っている段階で、自分の腹膜を使って透析(腹膜透析)を行うことで、残されている腎臓の機能を大事に温存して外来に定期的に受診する患者さんも増えてきました。このように、腎機能を少しでも温存することで、先に述べた心疾患や脳疾患の発症を抑えることが報告されてきております。この結果は、腎臓が悪くなっても、最後まで腎機能を温存することの重要性を示唆するものと考えられます。ちなみに腹膜透析とは腹膜透析用のカテーテルを腹腔内に留置し、自分の腹膜を用いて透析を行う方法です。時間の経過とともに腹膜の劣化(機能低下)をきたし、血液透析へ移行することにはなりますが、それまでは1か月に一度外来にかかり、カテーテルの問題はないか、カテーテル挿入部の感染はないか、腹膜の機能低下はなくきちんと透析がされているか、などをチェックすることになります。


糖尿病性腎症~厳格な血糖・血圧コントロール~

 さて、新規血液透析導入患者の原疾患としては、糖尿病性腎症が平成9年以降、ダントツ一位を占めております。現時点ではまだ糖尿病性腎症進展のメカニズムが解明されていないため、それに対する有効な治療薬が存在しない現状を考えると、今後も増え続けていくものと考えられています。周知のごとく、糖尿病は、腎臓だけを悪くするのではなく、全身の血管、多臓器を障害し、全身臓器の老化を引き起こします。また当院では、栄養士による食事指導から各合併症の評価(糖尿病性足壊疽)に重点を置いた治療を行っております。一般的に糖尿病性腎症をはじめとしたCKDの食事療法としては、三大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)に対する配慮のほか、体液、電解質に関連した食塩、水分、カリウム、リンなどに対する配慮が重要であり、病態が進むほど食事療法の必要度が高くなります。しかし、中には糖尿病はしっかりコントロールされているのに腎臓が悪くなる患者さんもいます。結局のところ、血糖コントロールを行なわなくても同じと誤解されて欲しくはありませんが、実はまだ解明されていない様々なメカニズムが存在すると考えられています。もちろん、糖尿病に高血圧症や高脂質血症、高尿酸血症が合併していれば、それらによる影響も関係してくるのですが、それとは独立した因子が存在することが近年わかってきております(ここでは割愛いたします)。
色々と書いてしまいましたが、やはり何といっても、患者さんご本人の病気に対する理解がなければCKD診療は成立しないものと考えております。先に述べましたが、現代の医療では、糖尿病性腎症の進行を抑えることは可能となってきましたが、治癒することは出来ず、治療法としては厳格な血糖・血圧コントロールが基本であり、さらにはタンパク摂取制限など、腎症の病期に応じた食事療法の重要性が挙げられています。


慢性糸球体腎炎~早期発見・早期治療を~

 次に、透析導入の原疾患としては、糖尿病性腎症に次いで多く、腎不全の原因でもある慢性糸球体腎炎が挙げられます。簡単に言えば、免疫調節機構の異常が背景にあり、尿にタンパクや血液が漏れ出てしまう病気です。しかし、尿の異常に関しても、尿路結石からくるびっくりするほどの血尿や茶褐色尿、突然の大量の蛋白尿(ネフローゼ症候群)を認め、尿が泡立ち、手足や顔がパンパンにむくんでしまわない限り、自分の体から出る尿に起こっている異常を察知される方は少ないかと思います。実際、健康診断時に偶然に見つかる検尿異常から慢性糸球体腎炎が見つかることが多く、健診の重要性が示唆されます。ですから、一年に一回の健康診断は非常に大事な検査であるとご理解下さい。慢性糸球体腎炎と書きましたが、その中でも、罹患率が日本でとりわけ多いとされているIgA腎症に対するマネージメントは非常に重要であると考えております。診断には腎臓の組織を顕微鏡で見て診断する検査(腎生検)が必要となりますが、その患者さんの腎生存率を考えるうえで腎生検の組織標本の所見が最も信頼できることには異論はなく、また腎生検を行った時点での高血圧、腎機能低下、高度蛋白尿、年齢なども予後判定上有用であることが分かっています。なお、腎臓が悪くなって蛋白尿が出ると考える方が多いかと思いますが、蛋白尿が出続けることで腎臓がもっと悪くなるという悪循環が形成されることがこれまでの様々な研究からわかっており、検尿異常における早期発見、早期治療の重要性が挙げられます。検尿異常(特に蛋白尿)を持続的に認めるのであれば、専門内科を受診することをお勧めいたします。実際、早期に診断し、その原因疾患を特定し、治療を行うことでその後の管理も行いやすく、安定した結果が得られることが期待されます。


災害時のネットワーク作り

 最後に、日本の透析患者数はすでに約30万人にのぼります。透析患者さんは人工透析を行うことが生命維持のために不可欠です。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、そして東日本大震災などの災害時にも透析療法は中止することは出来ませんでした。我々は、透析療法に依存しない社会を作り上げなければいけないのですが、現時点においては30万人を超える透析患者に今後、災害発生時に対する透析医療ネットワークの充足が必要であると考えられ、災害医療における血液浄化は日本透析学会が中心となって整備が進んできております。日本の透析医療は世界に誇れるものであり、これらもまた世界に先駆けて期待される分野であると思います。

♪70億人目の赤ちゃん♪が誕生しました

 世界の人口が70億人に達した10月31日。当院では、4人の元気な「70億人目の赤ちゃん」(写真)が産声をあげました。
 手足をバタつかせ、顔を真っ赤にして泣く姿に、小さくても命の大きさを感じられずにはいられません。お子様たちの健やかな成長を心よりお祈り申し上げます。
 国連は「70億人目の赤ちゃん」の誕生を祝うとともに、人口増加に伴う問題に対し、国際社会に一層の取り組みを呼びかけることにしています。今、世界で起こっていることに目を向け、1/70億人の私たちにできることは何か、考えてみる良い機会かも知れません。

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