しずおか日赤メールマガジン

第73号 平成23年09月01日発行


みなさま、こんにちは。朝晩の暑さも和らぎ、少しずつ過ごしやすい気候になってきましたね。
今日9月1日は、「二百十日(にひゃくとおか)」といわれ、季節の移り変わりの目安となる雑節の一つで、台風がよく来る厄日とされる日です。まさに、大型で強い台風12号が日本列島に接近しています。また、今日は「防災の日」でもあります。ぜひ、ご家庭で日頃の備えを再点検してみてはいかがでしょうか。
さて、メールマガジン第73号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
ワクチン接種は誰のため?

2. インフォメーション
高校生1日ナース体験

ワクチン接種は誰のため?  小児科医師 大河原一郎

 こんにちは。ここ数年でワクチンが様変わりしています。しかも最近のヒブ&肺炎球菌ワクチンの接種中止報道などで、お子さん、お孫さんをお持ちのご家族の方にとって、今一番の気になる事ではないでしょうか?今回はワクチンの問題点、今後のワクチンについて私見を交えて述べさせていただきたいと思います。

まずワクチンといっても多くの種類のワクチンがあります。BCG・三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風(はしょうふう)・ポリオ・麻疹(はしか)・風疹・おたふくかぜ・水ぼうそう・ヒブ・肺炎球菌・インフルエンザ・B型肝炎・子宮頚がんワクチン...。他にも狂犬病やA型肝炎ワクチンもあります。
これだけあると何をいつ接種すればいいのか、全くわかりませんよね。これは親御さんだけでなく、小児科以外の他科の医師も同様です。おそらく予防接種スケジュールをすぐに組める医師は小児科以外でほとんどいないのではないでしょうか?それだけ年々変化しややこしいものなのです。

 また静岡市含め、どの自治体の母子手帳の予防接種欄もそうなのですが、接種すべきワクチンについて「BCG・ポリオ・三種混合・MR(麻疹&風疹)・日本脳炎」しか書かれていません。これは「定期」「任意」とワクチンを分けてしまっているためです。「定期」のものしか母子手帳には書かれません。だから「任意」のヒブや肺炎球菌、水ぼうそう・おたふくは接種しなくてよい、と考えてしまう人が多いのです。さらにひどいことに「今までかかった病気」に「おたふくかぜ」「水ぼうそう」をあげています。これは「水ぼうそうとおたふくはかからないといけない」という変なプレッシャー(?)を親御さんに与えていることでしょう。もちろんワクチンで防ぐ病気であり、自然感染することはリスクをともなう事なのです。病気に「定期」も「任意」もないのです!

一般的なワクチンの話はここまでにして、次に多くの人が心配されている、ヒブ&肺炎球菌ワクチンの中止事件についてです。はじめにこれは「大きな間違い」であったと考えます。以前も日本は接種後に死亡例があったと言う事で三種混合ワクチンを1975年に中止しました。3年後に乳児を中心に約1万人の百日咳患者が報告され、113人の死亡報告がありました(中止前は死亡10例/3年間)。
 Paul A. Offit著「予防接種は安全か」日本評論社

それまで日本では百日咳を診ることはなくなり「幻の病気」とまで言われていました。それがワクチンを中止したがために、死亡数が一気に10倍にまで膨らんでしまいました。なぜ今回三種混合ワクチンやBCGは中止にならずに、ヒブ&肺炎球菌ワクチンだけ中止になったのか?それは40年近く前の苦い経験が厚労省にはあるからかもしれません。
 
 
ではなぜ今回死亡例があったのか?今回の死亡例はSIDS(乳幼児突然死症候群)によるものではないか?という説が大半です。SIDSは年間150例発生しており、最近ヒブ&肺炎球菌ワクチンを接種した人は増えていますから、このうちの一部でSIDSを起こす人が出てくると考えるのが妥当でしょう。また発生時期が冬に多かったこと、冬場はウイルス感染のオンパレードです。呼吸器障害を起こすRSウイルスやインフルエンザ、胃腸炎を起こすロタやノロウイルスなど死亡リスクの高いものが多いのです。またウイルス感染以外にも心疾患や脳炎でなくなるお子さんもいます。平成18年度の乳児死亡は2663人ですが、呼吸および心血管障害は全体の15%程度を占めます(約400人)。今回のワクチン接種「後」死亡7例のうちノロウイルス・メタニューモウイルスが1例ずつで認められており、チアノーゼ性の重症な心疾患を2例で認めています。

では海外ではこうした死亡例はないのでしょうか?アメリカでは販売後2年間で3150万回の接種があり、うち117人死亡しています。10万接種あたり0.37の確率です。このうち73人は死因不明(うち59人がSIDSと考えられています)。日本はというと肺炎球菌ワクチンは267万回の接種があり、うち4人死亡しています。これは10万接種あたり0.2の確率です。ヒブワクチンは451万回の接種があり、うち7人死亡しています。これは10万接種あたり0.2で海外と比較しても決して多くありません。またこの間の同時接種の割合は肺炎球菌75.4%、ヒブワクチン88%であり、単独接種の方が少なかったのです。
「小児用肺炎球菌・ヒブワクチンの安全対策について」2011.6月 医薬品・医療機器等安全性情報 No280より
こうした死亡報告はアメリカに限った事ではなく、フランスやオランダでも認めています。しかしいずれの国も死亡とワクチン接種との間に因果関係はなかったと発表しています。つまり国際的にはSIDSやウイルス感染など、他の原因で死亡した可能性が高いと考えていることが分かります。「ワクチンで死亡した」と騒ぎ立てるマスコミは日本ぐらいなものでしょう。

 日本赤十字社医療センター小児科顧問「VPDを知ってこどもを守ろう」の会の薗部友良先生はこうおっしゃっています。「VPDはワクチンで防ぐことができる病気。小児がんでさえ7割は治る時代にワクチンさえ接種していれば防げる病気で健康と命の損ねる日本の子どもは多くVPDは防ぐべき病気だ。これほどもったいないことはなく保護しないことは虐待といわれてもおかしくない」また小児科学会も同時接種について「①接種率が向上する②生後早期から病気の予防ができる③保護者の経済的・時間的負担が軽くなる④医療者の時間的負担が軽くなることから、こども達をワクチンで予防できる病気から守るため必要な医療行為である」と述べています。   http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_1101182.pdf
2011年の秋にはロタウイルスに対するワクチンも販売開始される予定です。ますます1歳未満で接種するワクチンは増えるわけです。もはや同時接種しないことには乳幼児をワクチンで病気から守ることは事実上むずかしくなっています。「VPDを知ってこどもを守ろう」の会のワクチンスケジュールでも「同時接種で受けなければいけません」と述べています。

KNOW-VPD!VPDを知って、子どもを守ろう
 ワクチンはこどもの為にあります。我々小児科医はこどもの為にワクチンを勧めています。ぜひこの機会にワクチンについてご家族で考え、接種を検討されることを切に願います。ワクチンの事に関しては小児科外来でご相談をお受けしています。医師・看護師・事務スタッフにお気軽にお声かけいただければ幸いです。


高校生1日ナース体験


 例年、市内の高校生を対象に行っている「高校生1日ナース体験」。今年も当院では7月29日(金)、8月10日(水)の2日間で実施、男子生徒4名を含む55名の参加がありました。
初めて身に着けた白衣にはにかむ笑顔を見せた生徒達は、実際に病棟へ出向き、看護師の指導の下、戸惑いながらも患者さんのケア(脈・血圧測定や食事介助、移動など)に積極的に参加しました。



 
 

授乳体験のようす

また、看護体験後の座談会では、「看護師の患者さんとのやり取りを間近に見て、コミュニケーション能力の高さに驚いた。」「将来看護師になりたいと思い参加し、この仕事への理解をより深めることができ、有意義な時間を過ごすことができた。」などの感想が聞かれました。
加速する高齢社会の中で、看護師の果たす役割・使命はますます重要になっています。今回の体験をとおし、思いやりなど看護することへの理解と関心を深めると共に、将来、看護の道を目指してくれる生徒が増えることを期待します。

しずおか日赤メールマガジン 第73号

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