しずおか日赤メールマガジン

第68号 平成23年04月01日発行


このたびの東北関東大震災におきまして被災された方々、そのご家族の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被災地の皆さまが1日も早く以前と変わらぬ生活をとり戻されることを願うとともに、復興支援等の医療活動に今後も力を尽くしてまいります。

目次

1. 今月の病院ニュース
脊椎センター開設にあたって

2. インフォメーション
病院増改築工事着工のお知らせ

脊椎センター開設にあたって  整形外科部長・脊椎センター長 小川 潤

 整形外科疾患のなかでもとくに多い脊椎脊髄病(せぼねの病気)の診療に特化した脊椎センターを4月1日より開設することになりました。と言っても新しい建物ができる訳ではなく、従来の整形外科外来の中に併設することになります。昨年の整形外科の手術件数は1,000件を超え、脊椎脊髄手術は260件でした。今年に入ってもせぼねのことでお困りの患者さんが当科の門をたたくケースは増える一方です。当院整形外科の得意分野を広くみなさまにお伝えするために、せぼねの病気を扱う科であることを明確にした次第です。

静岡市医師会の先生方の発案で、病院と診療所のスムースな連携を目的とした病診連携イーツーネット“腰痛症” が本年3月から開始されました。イーツーネットとは、病院と診療所のそれぞれの長所を生かすためのシステムです。当院でもこの考え方に賛同し、脊椎脊髄疾患の患者さんの受け皿を明確にすることで、地域医療のお役に立ちたいと思っております。

最近は、市内全域はもちろんのこと、藤枝・島田地区の診療所の先生方からも脊椎疾患の患者さんをご紹介いただくようになりました。たいへんありがたいことといつも感謝の念を忘れないように職務にあたっています。さらにうれしいことは、すでに当院で治療を受けた患者さんの口コミでご来院いただくことがよくあることです。センター担当職員一同、慢心することなく初心を忘れずに治療にあたっていく所存です。

脊椎疾患を専門とする医師の集団である、日本脊椎脊髄病学会 という整形外科医を中心とした学会があります。当センターは同学会の指導医の資格をもった小川と副部長の篠崎が中心となって治療にあたっております。受診希望の方は、医療機関からのご紹介が必要です。外来は月曜日の朝8時半から11時、火曜から金曜日の朝8時半から9時半まで行っております。すでに整形外科で治療中の方はセンター外来でなく通常の整形外科の再診外来におかかりください。

当センターの治療内容をご紹介します。働き盛りの方に多い腰椎椎間板ヘルニアに対しては内視鏡下ヘルニア摘出術を施行しています。当院は厚労省の施設基準を満たした病院です。2cmに満たない傷で手術できる本法はよい手術法ですが、問題点もあります。よくあるのは、適応がないにもかかわらず内視鏡で手術してほしいと患者さんから希望してくるケースです。内視鏡手術の適否に関しては当方で決めさせていただきます。
一度手術したがよくならないとか、再発した症例の診断・治療を得意としております。一度メスを加えた場所は瘢痕ができ神経周囲が正常の解剖とはまったく別物になってしまうので再度手術するには高度の技術が必要です。よくならないのはどういうわけなのか、診断すること自体がまず困難です。よくならない原因の一つに、いわゆるfar out syndrome(病院ニュース 腰痛治療のウソとホント その3 参照)があります。当センターの手術症例数が多いのはこの隠れている疾患を見つけてしまったことも一因です。

“私はもう歳だから手術をしても治らないと思っていた”と言われることがあります。“いいえ、あなたはまだ若い方ですよ”と70代の方に申し上げると驚かれます。静岡は食べ物のせいか、若いときから体を動かしてきた方が多いからか、それとも遺伝子のせいかはわかりませんが、嬉しいことに元気なお年寄りが多いのです。私も静岡に来るまでまさか80代の方たちをこれほどたくさん手術することになろうとは思いませんでした。よくなりたい、歩けるようになりたいという意欲があるならば、回復に年齢は関係ないと感じています。

手術の際にはなるべく顕微鏡を使用し、安全かつ確実に手術することを心がけています。たとえば頚椎のヘルニアの手術では顕微鏡を使うことによって削る骨の量が少なくて済み移植する骨を小さくできるので、手術のあとに硬いカラーを使用せずに手術翌日から立つことができます。

手術以外の治療法はやっていないのか?とのご質問もありましょう。薬物療法・理学療法・ブロック治療を受けてきたが効果がなく、手術を前提として紹介されてくる患者さんが多いのは事実です。しかしながらむやみに手術を勧めることはいたしません。われわれの役目は治療法の根拠を科学的に説明することです。そして多くの場合、治療の選択権は患者さん自身にあります。

巷で言われている“せぼねの手術はやるものではない”の原因のひとつは診断です。人間は年をとれば誰でも椎間板が老化します。MRIで黒くでっぱっているのがすべて悪いわけではありません(病院ニュース 腰痛治療のウソとホント その1 参照)。患者さんの体を触り、神経の発しているサインを検知することによって、悪い場所を科学的に同定するのも技術のひとつです。

もうひとつの原因はやはり手術自体の難易度が高いということです。せぼねや脊髄の周囲には血管がうようよしています。出血を止める方法は直接の圧迫か電気メスで焼くことですが、外力に弱い脊髄のすぐ脇で圧迫したり焼いたりすればどうなるかは言わなくてもお分かりでしょう。出血を上手にコントロールすれば安全に神経を操作でき手術時間も短くできます。当センターではたとえば金属を入れる腰椎の椎体間固定術は平均的には3時間弱、出血は200g弱で行います。

せぼねの治療に対する迷信から誤った診断や治療を受けて泣き寝入りしているケースがまだまだ少なくないと感じています。我々はそのような患者さんへの灯台のようなものでありたいと願っています。


  • 腰痛治療のウソとホントその2はこちらをご覧下さい

     

病院増改築工事着工のお知らせ

静岡赤十字病院は、平成23年3月28日に起工式を行い、病院増改築工事に着手致しました。ご利用の皆様にはご迷惑をお掛けいたしますがご理解とご協力をお願いいたします。

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