しずおか日赤メールマガジン

第67号 平成23年03月01日発行


 日ざしもようやく緩かくなってきました。
 各地からは花の便りが聞こえ始め、春の訪れを感じる今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょか。
 さて、メールマガジン第67号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
軽度認知障害とアルツハイマー病

2. インフォメーション
子宮頸がん・ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成について

「軽度認知障害とアルツハイマー病」神経内科部長 芹澤 正博

 国民の5人に1人が65歳以上という超高齢化社会の我が国において、高齢人口の増加とともに認知症患者数は年々増加傾向にあり、その対応が切迫した大きな課題となっています。認知症とは、「脳の器質的障害によって生ずる持続的な認知機能低下の状態であり、それが社会的あるいは日常的な生活を行っていく上で、明らかな障害をきたすもの」と定義されます。認知症の原因疾患は多岐にわたりますが、その約半数はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease : AD)で、今や患者数は125万人程度に及ぶと推定されます。

 一方、何らかの認知機能障害はあっても生活上の障害はなく認知症とは言えない状態、すなわち、社会生活や日常生活上の支障はなく認知症の診断基準を満たさないものの正常とは言いがたい状態が存在し、それらの状態に対して軽度認知障害(mild cognitive impairment : MCI)という概念が提唱されています。MCIは、近年ADの予防や、その根治治療薬開発などの観点から注目されている概念で、認知症ではないが正常と言えない境界域の知的状態を意味します。MCIの概念については歴史的な変遷がみられましたが、2003年のMCIシンポジウムで診断基準が次のように示されました。1.認知機能は正常とはいえないが、認知症の診断基準も満たさない。2.本人または情報提供者から認知機能低下の訴えがある。3.複雑な日常生活動作の障害は最小限にとどまり、基本的な日常生活機能は正常である。そして、MCIは記憶障害の有無と認知機能障害領域(記憶、見当識、思考判断、計算、言語、遂行機能、視空間認知など)の拡がりによって4つのサブタイプに分類されました。まず、記憶障害の有無によって健忘型と非健忘型に分けられ、さらにそれぞれを単一の認知機能領域の障害か複数の認知機能領域の障害かによって単一領域と複数領域に分けるものです。認知機能に影響を及ぼしうる頭蓋内疾患、精神疾患、全身的な内科疾患、薬物中毒など様々な疾患がMCIの基礎疾患となり、その基礎疾患によりMCIのたどる経過は様々です。数年以上もMCIのレベルでとどまるものや、あるいは正常な認知機能に回復するものもありますが、認知症へ進行するMCIも数多く存在します。MCIから認知症への進行は、最近の報告では平均で年間10%と推定されていますが、特に、健忘型MCIからADへの進行が注目を集めています。

 ADの脳病理所見では、大脳の神経細胞外へのアミロイドβ蛋白からなる脳アミロイドの沈着(老人斑)と、神経細胞内のリン酸化タウからなる神経原線維変化の蓄積が特徴とされます。そして、これらの蓄積物質によって神経細胞・シナプス機能が障害され、認知障害が起こるものと考えられています(アミロイド仮説)。ADの病理像は、老人斑、神経原線維変化、神経細胞脱落の順に現れ、最初の病理変化である老人斑は臨床症状が顕在化する10年以上も前から始まることが明らかになっています。脳にADに特徴的な病理学的変化が出現し進行しても、長期間にわたり脳内で代償機能が働き、脳機能低下を補い続け症状の発現を抑えているものと推測されます。また、ADへの進行が注目されている健忘型MCIにおいても、病理学的には既にADと同様な変化が起こっていることが報告されています。これらの事実をふまえると、AD発症前段階での診断の確立が、効率的な根本治療・予防の実現には不可欠と考えられます。

 このような目的で、ADに進行する率の高い健忘型MCI、軽症AD、健常者を対照として、脳内アミロイドをPETスキャンで検出する「アミロイドイメージング」とMRIイメージングによる脳容積評価と体液(脳脊髄液・血液)生化学マーカーを経時的に検索し、そこに臨床症状・神経心理学的評価を組み合わせてADの進行過程のモニター・発症予測法を確定しようとする大規模臨床観察研究(Alzheimer disease neuroimaging initiative : ADNI)が2005年より米国で開始されました。そして、本邦でも、J-ADNIとして2007年度から同様な臨床観察研究が本格的に開始されています。

 この10年でADに関する医学的知見は飛躍的に進歩していますが、いまだにADの進行を抑止する確実な手段は確立されていません。ADに対する薬物治療は症状緩和薬として塩酸ドネペジルが登場し早期投与の有用性が示されていますが、その効果は限定的で認知障害の進行を阻止することはできません。現在、アミロイド仮説に基づいてAD根本治療薬の開発が精力的に行われており、その実用化が切望されます。さらに、ADNIの結果によりAD発症前診断が確立され、MCIの段階からハイリスク群を的確に検出し、ADへの進行の予防や適切な治療方法が近い将来確立されることが期待されます。

 現状では、ADへの薬物療法の効果は限定的であるため、非薬物療法がADに対して重要な役割を担っています。非薬物療法の中心となるものが、いわゆる広義の認知リハビリテーションです。進行性の認知機能低下を少しでも抑止し、機能代償や機能維持を図ることを目的に、回想法・現実見当識訓練法・芸術療法・リクレーション療法などを組み合わせたデイケアプログラムなどの集団リハビリテーションが行われています。認知症の初期の段階、あるいはMCIの段階で、これらの種々の技法を組み合わせて認知症のリハビリテーションに取り組むことが今後も重要性を増すものと思われます。

子宮頸がん・ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成について

~平成23年2月1日から、3ワクチンの全額公費助成を開始しました~

助成対象者
1.子宮頸がん
静岡市に住所を有する中学1年生~高校1年生の年齢に相当する女子

ただし、平成23年3月31日までに1回でも接種した高校1年生の年齢に相当する女子は、平成23年4月1日以降も対象となります(平成24年3月31日まで)。発熱又は急性の疾患により接種を受けることができなかった場合も同様です。

2.ヒブ(インフルエンザ菌b型)
静岡市に住所を有する2か月齢~5歳未満児

3.小児用肺炎球菌
静岡市に住所を有する2か月齢~5歳未満児

接種場所
小児科外来 毎週月曜日14:00~(要予約)

助成期間
平成23年2月1日~平成24年3月31日

接種料金
無料

接種回数
1.子宮頸がん
初回接種・初回接種から1か月後・初回接種から6か月後の計3回
2.ヒブ(インフルエンザ菌b型)
通常は2か月齢以上7か月齢未満で接種を開始。初回免疫として4~8週間間隔で3回、追加免疫として3回目接種後おおむね1年の間隔をあけて1回の計4回。
3.小児用肺炎球菌
通常は2か月齢以上7か月齢未満で接種を開始。初回免疫として27日以上の間隔で3回、追加免疫は12~15か月齢の間に1回接種で計4回。

持ち物
母子手帳(ない場合は住所、生年月日のわかる身分証明証)

問合せ先
小児科外来へ

しずおか日赤メールマガジン 第67号

メールアドレスの変更、配信解除  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/about/mailmag/

このメールマガジンに対するご意見・お問合せは
静岡赤十字病院 企画課 mail : kikaku@shizuoka-med.jrc.or.jp

当メールの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。
編集・発行 : 静岡赤十字病院  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/
平成23年03月01日発行