しずおか日赤メールマガジン

第60号 平成22年08月01日発行


 晩夏の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。夏バテはしていませんか?今後も気温が高い日が続きますので、お体には十分ご自愛ください。
 さて、メールマガジン第60号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
切らずにがんを治すカメラの手術って何?
消化器外科の鏡視下手術

2. インフォメーション
「脳卒中リハビリテーション看護」認定看護師が誕生しました

切らずにがんを治すカメラの手術って何?-消化器外科の鏡視下手術-

鏡視下手術とは

                                            外科部長  白石 好 
 
 最近、がんと診断された患者さんに手術について相談すると、「カメラを使った手術をすると切らずにがんを治せると聞いたけど、その方法でやってもらえないだろうか?」と言われる方が増えてきました。新聞やインターネットなどで、スポーツ選手や芸能人のだれそれが胃がんや大腸がんの手術をカメラの手術で行なったと報じられているのもその理由の一つかと思います。
 今回はこのカメラを使った手術についてお話ししましょう。さて、全く身体を切らずに胃や腸を切りとる手術をすることは不可能ですので、「切らずにがんを治す」という所には二通りの誤解があります。一つは胃カメラや大腸カメラといった消化管の内部をみる内視鏡を使用して病巣を削り取る治療法と混同していることです。確かに消化器内視鏡の技術の進歩はめざましく、以前では切れなかった大きさの病巣も内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)という技術で切り取れるようになりました。ただし、これは胃や腸の粘膜という表層の部分にあるがんが対象となります。がんは粘膜から発生して徐々に大きくなり、粘膜より深い部分(粘膜下層、筋層、しょう膜)に浸潤していきます。そうなると周囲のリンパ節に飛び火する(転移)危険があるので、がんの根治手術はこのリンパ節も胃や腸と一緒に切除することが大事になります。その場合はいわゆる外科的な手術が必要になります。
 そこでもう一つの誤解ですが、「切らず」は全く創をつけないのではなく、「大きく切らず」という意味だと言うことです。これが鏡視下手術です。胸部にある臓器を対象とする肺がんや食道がんに対しては胸腔鏡(きょうくうきょう)下手術、腹部の胃がんや大腸がんに対しては腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術と呼びます。胸や腹の中にカメラを入れて、テレビモニターで映し出して、その画面を見ながら5㎜-1㎝ほどの小さな孔からマジックハンドのような細長い器具(鉗子、電気メスなど)を挿入して操作します。ただし、切除して臓器を取り出し、再建するためには4-5㎝の小さな創が必要です。通常の開胸・開腹の手術との違いは、端的に言えばこの創の大きさです。つまり20-30㎝切るところを、4-5㎝の創といくつかの孔で済むということです。
 胸腔鏡や腹腔鏡という技術はもともと診断目的に使われていましたが、1980年代にドイツで虫垂切除術や胆嚢摘出術に応用されたのが始まりで、1990年代には全世界に腹腔鏡手術として普及しました。現在、胆嚢摘出術は約80%が鏡視下手術で行われており、完全に標準的な手術方法となりました。がんの手術としては、国内では1991年に胃がん手術が、1993年に大腸がん手術、1996年に食道がん手術が行われました。当初は大学病院などの研究施設だけで行われてきましたが、手術方法や器具の進歩で徐々に一般の病院にも広がりました。また、当初は比較的早期のがんでなおかつ切りやすい場所にあるがんだけを対象にしていましたが、進行がんや病巣の部位についての適応も広がっています。

鏡視下手術をする意味

 鏡視下手術が普及している一番大きな理由は、患者さんにとってメリットが大きいと言うことです。創が小さいと言うことは、当然痛みも少なく、痛みが少ないから早くに動くことができます、したがってリハビリもしやすい。結果的に早くに退院して社会復帰できると言うことになります。また、大きく切らないことで深呼吸ができる、痰が出しやすくなることで肺炎を防いだり、腸の癒着が少なく腸閉塞を防いだりできます。これを患者にとってダメージの少ないという意味で低侵襲と表現し、鏡視下手術は低侵襲手術とも言われています。  
 一方では臓器を直視できて触れることができる開腹・開胸手術と比べると技術的に大変だというのが、多くの外科医の正直な気持ちだったと思います。実際にこの手術をはじめたときには、同じ手術でも通常の開腹手術と比べると倍ぐらいの時間が掛かっていました。ところが最近では、Hi-Visionのカメラと液晶モニターの導入や、切離と止血を同時に行なう手術器具の開発などの器械の進歩で手術しやすくなってきました。手術がしやすくなることで外科医のストレスも軽減し、行なう症例数も増えてきます。経験が増えると外科医の腕が向上しさらに手術がやりやすくなります。最近では、通常の手術よりも出血量が少ないのは当たり前で、手術時間も短くなってきています。また、骨盤の下の方など通常の開腹では見にくいところがカメラにより拡大して見えることで、普通の開腹よりも精密に操作できるとも言われています。
 しかし、すべてのがんに対して鏡視下手術がよい訳ではありません。癒着がはげしい進行したがんや難しい臓器の手術など難易度が高い手術ではかえって出血が多くなってしまい、結果的に低侵襲にならないこともあり、症例によっては安易に行うべきではありません。したがって、鏡視下手術か通常の開腹手術を選択するときにはよく担当医師と相談して決めることが大切です。

当院の外科で行っている手術

 当院の外科で行っている鏡視下手術の紹介をしましょう。胆嚢摘出術(主に良性の胆石症)、虫垂切除術、直腸も含めた大腸がん手術、良性疾患(潰瘍性大腸炎、大腸憩室炎)の大腸切除術、胃十二指腸潰瘍手術、胃がん手術、食道がん手術などを行っています。大腸手術では、通常開腹では術後約10日の退院が、鏡視下手術を行ったほとんどの方は術後7日で退院しています。食道がんでは、以前は退院まで約1ヶ月掛かっていたのが、2週間で退院しています。
 最近のトピックとしては、腹部にあける孔を1つだけにして同じ孔からカメラと操作する器具を入れて手術する技術(単孔式腹腔鏡下手術)を導入し、胆嚢摘出術や虫垂切除術を行っています。
 今後も患者さんが楽に手術を受けられるように、どんどん手術の技術は進歩していくでしょう。外科医もその進歩に遅れないように、日々精進しています。

「脳卒中リハビリテーション看護」認定看護師が誕生しました。

 当院では、新たに「脳卒中リハビリテーション看護」の分野で2名の認定看護師が誕生しました。今後は、すでに認定されている「救急看護」「糖尿病看護」「がん化学療法看護」「感染管理」「皮膚・排泄ケア」の5分野9名の認定看護師とともに、専門の知識と技術をもとに患者さんやご家族を支援していきます。

脳卒中リハビリテーション看護

 脳卒中リハビリテーション看護の認定分野は、今後の急速な高齢化による脳卒中患者の増加に的確に対応するため、平成21年度より新たに設置された分野です。静岡・愛知・大阪の3箇所にこの教育機関があり、今年の認定審査では全国で79名(県内13名)が『脳卒中リハビリテーション看護』認定看護師となりました。
 当院の2人も、脳卒中患者の急性期・回復期・維持期において、適切なリハビリテーションを実践するための知識と技術を一連の過程の中で習得しました。
 学んだ看護技術をもとに、患者さんの療養生活がより安全で快適となるよう努めます。

認定看護師になるために

 認定看護師の資格を取得するためには、5年以上の実務経験を経て、当該分野の教育課程終了後に認定審査に合格し、登録することが必要となります。

日本国の保健師、助産師および看護師のいずれかの免許を有すること

実務研修5年以上(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)

認定看護師教育課程修了(6ヶ月・600時間以上)

認定審査(筆記試験)

認定看護師認定証交付・登録

◇認定看護師数 全19分野 7,363名(2010年7月現在)

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