しずおか日赤メールマガジン

第58号 平成22年05月31日発行


 みなさまこんにちは。
 平成22年5月より当院ホームページをリニューアルいたしました。これにより、メールマガジンも今号(第58号)よりレイアウトを変えてお届けいたします。
 みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
臓器移植法改正
どうなる日本の臓器移植

2. インフォメーション
ハイチ大地震の救援活動に職員を派遣

「臓器移植法改正 どうなる日本の臓器移植」 

院内移植コーディネーター 臨床工学課 課長 田形 勝至 

  平成9年10月に施行された臓器移植法が昨年7月に大きく改正され、平成22年7月17日から施行されます。

臓器移植とは

 病気や事故によって臓器(心臓・肝臓・腎臓など)が機能を失った場合に、人の健康な臓器を移植して機能を回復させる治療が移植医療です。臓器提供者という第三者が存在しない限りこの医療は成り立ちません。
 元気で健康な家族(生きている人)からの肺・肝臓・腎臓などの部分的な提供を生体移植といい、脳死や心臓が停止して亡くなった人からの提供が死体移植で、臓器を提供する人をドナー、移植を受ける人をレシピエントとよんでいます。

心臓死・脳死・植物状態って?

 日本において、心臓の停止、呼吸の停止、瞳孔の散大(脳機能の消失)という3つの徴候を確認した時点を心臓死としていました。しかし医学の進歩により全脳の機能が停止して、本来心臓死を迎える状態でも薬剤や人工呼吸器を装着することで血圧や呼吸を維持し数日間心臓を動かし続けることができます。この状態を脳死といいます。
  脳死の場合は、どんな治療をしても回復することはなく、多くは数日以内に心臓が止まります。世界の多くの国々では、脳死を人の死としています。

現行の移植法案

◎脳死下での臓器提供を行う場合は、本人の書面による『意思表示カード記載』と家族の承諾の両方が必要です。
本人が意思表示カードを所持していても、家族が反対すれば臓器提供は行われません。
◎15歳未満の人は意思表示カードを所持していても脳死での臓器提供はできません。
◎脳死で提供できる臓器として定められているのは、心臓、肝臓、肺、小腸、腎臓、膵臓です。
◎脳死ではなく心臓死からの場合は、本人の意思表示がなくても家族の同意で腎臓、角膜、膵臓が提供できます。(但し膵臓の場合は心臓死でも意思表示が必要)
◎死のあり方について、臓器移植を行う場合に限り脳死を人の死として扱っています。
(注)この法律でいう家族とは、同居別居は関係なく配偶者と親・子供・兄弟の2親等までの親族と定められています。15歳以上という年齢制限に関しては、「15 歳に達した者は、遺言ができる。」という民法上の規定を根拠としています。

改正法案

◎本人の意思表示が不明の場合であっても、家族の承諾あれば脳死下での臓器提供は可能です。
◎15歳という年齢制限の廃止
(虐待児からは臓器移植は行わない)
◎人の死のあり方について、改正後は『脳死が一律に人の死』になります。
◎親族への優先的な臓器供臓器提供が可能になりました。
(意思表示カードに、親族への臓器提供意思を記載する)
この親族優先案については平成22年1月17日から施行が開始されています。

改正に至った大きな理由

 大きな理由のひとつに絶対的な臓器不足が挙げられます。アメリカでは毎年、年間7,000件ほどの脳死下臓器提供が行われているのに対し、日本では臓器移植法が施行されてから13年間で86症例(平成22年1月現在)しかありません。この数の違いは、移植医療に対するシステムの違いや死生観についての考え方の違いから来るものと考えられています。また15歳という年齢制限により、我が国では特に臓器の小さい小児は提供を受けることができず、募金などで数億のお金を募り海外に渡航して臓器移植を受けざるを得ないという実態があります。
 もうひとつの理由として、一昨年に国連の専門機関である世界保健機関(WHO)から、海外への「渡航移植」の自粛を促す指針が出されました。しかしこの時期は世界的な新型インフルエンザの流行でこの指針は先送りされましたが、平成22年度の総会で議決される見通しです。この指針は、要するに「自分の国で必要な臓器は自分の国で何とかしましょう。」ということで、これらのことから子供への臓器移植や臓器不足を解消するために移植法を世界基準に近づけようと考え、大きな改正がなされました。

改正案の問題点

 年齢制限廃止により小児や乳児に対して臓器移植が可能になります。しかし、昨年暮れに毎日新聞が全国医療機関に対し行ったアンケート調査では、小児に対する脳死判定の難しさや小児救急医療体制の未整備、虐待児を見抜けないなどという理由で、60%ほどの施設で小児の臓器提供への対応ができないと答えています。
 また、『脳死が一律に人の死』についての法案に対し、日本宗教連盟などが日本において脳死は人の死でないと反発しており、昨年11月に「臓器提供はしません。」という意思表示をする『ノンドナーカード』を100万枚発行するなど、法改正後も様々な問題を抱えています。

人工透析と腎臓移植

 日本臓器移植ネットワークに臓器移植を希望する登録者が12,800人ほどいます。そのうちの12,000人ほどが腎臓移植希望者です。腎不全の状態になると、尿が出なくなり体内に老廃物が溜まってきます。これを放置すると尿毒症という重篤な状態になってしまうため、腎不全の患者さんは人工的に血液中の老廃物を除去する装置、人工腎臓を用いた血液透析や腹膜透析を受ける必要があります。しかし、この透析療法もすべての腎臓の機能を代行するわけではありません。
血液透析は週3回、1回あたり4~5時間を要し、なおかつ血液を体外に導くために腕に2本の太い針を刺すなど、患者さんの苦痛や社会生活や家庭生活へ大きな影響があります。また、透析患者は日常生活の中で食事の塩分や飲み水の厳しい制限があります。しかも透析をしても腎機能そのものは回復しないため、生命を維持するためには一生透析治療を行わなければなりません。
  唯一この治療法から離脱する方法は腎臓移植です。腎臓は誰でも二つ持っていて、一つでも普通の生活を送るには支障がないことから、家族から片方の腎臓提供を受ける生体腎移植が年間1,000症例ほど、心臓死からの移植が200症例ほど行われています。しかしながら平成21年に全国で人工透析を受けている患者は約28万人ほどで、年間1万人ずつの増加傾向にあります。その他にも、透析導入予備軍と呼ばれている患者さんが、数百万人いるといわれています。

当院の臓器移植に関する方針

 当院は、静岡県から県内に17施設ある臓器移植推進協力病院に指定されております。
 現在、改正案施行に対応するべく、院内の臓器移植に関するマニュアル等の改正などの準備を進めております。
 当院も、意思表示カードの提出や家族の人から申し出があった場合には、患者さん本人や家族の意思が尊重されるように、その気持ちをしっかりと受け止めて速やかに対応出来る様に努力していきます。

おわりに

 臓器移植法が改正され、臓器提供という善意の第三者によって、救える命がひとつでも増えることを願います。

ハイチ大地震の救援活動に職員を派遣

 平成22年5月17日、ハイチ大地震での救援活動のため現地へ派遣される、当院職員 下山美穂看護師長(6-2病棟)の壮行会を行いました。
 ハイチ大地震は、平成22年1月12日午後5時頃、カリブ海地域のハイチ共和国、南西22キロのウエスト県で発生し、深さ10キロを震源とするマグニチュード7.0の地震は、死者22万人、負傷者30万人の被災者を出しました。
 日本赤十字社ではこのような状況を受けて、これまでに、緊急対応ユニット(ERU)チームを第4班にわたり派遣してきました。
 当院の下山看護師長においては、第4班に代わる第5班のメンバーとして平成22年5月18日から6月22日までの約1ヶ月間現地へ派遣されます。今回が2度目の海外派遣となる下山看護師長からは、「全てが初めてという前回(平成16年2月イラン南東部地震)の派遣とは違い、今回は以前経験したことを活かせる機会もあると思うので、周りの職員や現地ボランティアの人と協力して積極的に救援活動をしてきたい。」と心強い言葉が聞かれました。

緊急対応ユニット(ERU)について
緊急対応ユニット(Emergency Response Unit:ERU)とは、緊急事態や大規模災害発生時に必要とされるサービス提供のために各国赤十字・赤新月社が整備している訓練された専門家チーム及び資機材の総称です。

しずおか日赤メールマガジン 第58号

メールアドレスの変更、配信解除  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/about/mailmag/

このメールマガジンに対するご意見・お問合せは
静岡赤十字病院 企画課 mail : kikaku@shizuoka-med.jrc.or.jp

当メールの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。
編集・発行 : 静岡赤十字病院  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/
平成22年05月31日発行