しずおか日赤メールマガジン

第57号 平成22年04月30日発行


 晩春の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 5月は1日の日本赤十字社創立記念日を始め、8日の世界赤十字デーなど赤十字に大変ゆかりのある月となっています。当院でも5月11日(火)から13日(木)まで赤十字キャンペーンを行い当院の取り組みを紹介させていただきますので、みなさま楽しみにしていてください。
 さて、メールマガジン第57号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
腰痛治療のウソとホント
その3

2. インフォメーション
赤十字キャンペーン2010
開催☆
ホームページリニューアル

「腰痛治療のウソとホントその3」 整形外科 部長 小川 潤

レーザー椎間板手術氾濫にもの申す

 “切らずに直すレーザー手術”仕事は忙しいし、体にメスは入れたくない。インターネットで調べたら、なんだこんな夢のような治療法があるなんて、あの医者の言うとおりに手術を受けなくてもなんとかなりそうだ、なんてほくそえんでいる方。ちょっと待ってください。われわれはその手術のことを良く知っています。だからこそお勧めしないのです。
 レーザー手術の大半は脊椎手術の経験の乏しい医師によって施行されています。そういう医師はレーザー手術を 1万件やった、と誇っているかもしれません。保険は利かないけど、2箇所以上のときは割引きます、もし利かなければ代金の一部をお返しします、なんて良心的?な業者もいるようです。
椎間板ヘルニアの治療には大きく分けて3つあります。ひとつは外科的治療(手術)、もうひとつは薬やブロック注射などを使用する手術でない治療(保存療法)。そしてもうひとつ、中間療法というのがあります。椎間板にパパイヤの酵素を入れてヘルニアを溶かすキモパパイン療法、レントゲンを見ながら椎間板に太さ数mmの針を刺し、その中に特殊な鉗子を入れ髄核を摘出する治療(PN法)は手術と保存療法の中間的な治療として脚光を浴びた時期もあります。レーザー手術もこれの仲間です。レーザー光線を髄核に当て蒸散させることにより内圧を下げるメカニズムがあるとされ、椎間板の内圧が高いタイプのヘルニアに有効性があることがわかってきました。つまり20代くらいの比較的若い世代の老化の少ないヘルニアには有効なことがあります。
 せぼねの手術を生業とする整形外科医によって構成されている日本脊椎脊髄病学会のなかで、レーザー手術は認知されているとは言いがたいです。その最大の理由はこの手術の手技が容易であるために、他のヘルニアの手術法に習熟していない医師によって適応を考えずに施行され治らないばかりか、ときに再手術を必要とするような合併症をきたすためです。
 施行の是非が間違っているばかりでなく、やり方によってはレーザーの熱によって骨が死んでしまい、骨が崩れて新たな痛みが発症したり、麻痺が出たり、最悪死亡したりという不幸な転帰をとる症例がいくつも報告されています。レーザー手術はある程度の経験のある医師ならそれほど難しくない手技で、それだけを何万例やったとしても決してせぼね手術のベテランとは言えないのです。私も都内の大学でレーザーの手術を実際に施行してきました。効く症例もあることはありますが、その適応は現状では極めて少ないのです。レーザー手術に興味のある方はまず当院にご来院ください。その適応があるのか否かを保険適応のなかで診断いたします。

古典的診断法の存在意義

 70代の男性。両下肢がしびれ、うまく歩けないと訴えて来院しました。都内の大学病院の整形外科、神経内科で腰椎のMRIを撮影され腰部脊柱管狭窄症と言われ、投薬を受けていました。診察すると下肢に病的な神経のサイン(反射)が出ていました。胸髄の疾患を疑った私は音叉を使って下肢の振動の感覚を調べると、この方は振動を感じ取ることができませんでした。胸椎MRIを撮影すると脊髄腫瘍がありました。脊髄腫瘍は形状から良性が疑われ、手術をお薦めしました。腫瘍は無事全摘でき、下肢のしびれは消失しました。脊髄腫瘍は脳腫瘍と違ってほとんどが良性であり、命に関わることは稀です。大きさはほとんどが指の頭くらいです。なぜこんな小さくて良性のものを危険を冒してまでとる必要があるのか?それはこれが狭い脊柱管内にでき脊髄を圧迫して麻痺や痛みの原因となるからです。
 40代の女性が下肢のしびれを訴えて来院しました。レントゲンに異常がないと言われたが、専門的な検査を受けたいとの希望で来院しました。腰椎の疾患を思わせる徴候はありません。ハンマーの検査などで下肢の病的な反射が少し出ており、軽度の歩行障害を訴えることから胸髄病変を疑いMRIを撮影しました。果たして所見は胸椎高位の脊髄ヘルニアでした。
 脊髄ヘルニアはMRIが撮影できるようになってからたまに発見されるようになり文献的には最近よく見かけるものの、たいへん稀な病態です。私もいままで2例しか手術の経験がありません。この方は症状が軽いので進行性の病気でないことを説明し、経過観察することにしました。
 最近MRIにより無侵襲に脊髄の検査ができるようになりました。むやみに検査したことで脊髄腫瘍が偶然発見され、大きな病院に紹介されてきます。ただし胸椎の病変は腰椎に比べて圧倒的に少数です。医療費削減が叫ばれる昨今、なんでもかんでもどんな人でも検査をすればいいというものではありません。
 下肢がしびれるという場合、下肢の末梢神経、骨盤内の、腰椎、胸椎、頸椎、脳幹、と順番に調べていけば良いのですが、それらの画像を全部調べていたら時間的にも経済的には大変なロスです。しかもそれで病変がみつからなかったらどうするのですか?画像のみによる診断というものはさほどにあいまいなものなのです。
 我々には神経学という、お金のかからない古典的な武器があります(腰痛治療のウソとホント その1参照)。武器と言ってもさもないものですが、徒手的に神経の異常なサインを検出することで悪そうなところをしぼることができます。前出の患者さんの場合もそのような診断法によって最短の方法によって病変を明らかにすることができました。我々の祖先の知恵は偉大です。

他の病院で手術したが良くならない

 いつも患者さんに言われる耳の痛い言葉。せぼねの手術は怖い、手術をして歩けなくなった、痛みが悪くなったという話をよく聞くなどなど。せぼねの手術を生業として20年以上。そんなにいつも手術の結果が悪くてどうしてこの仕事を生業とすることができましょう。
 どんな手術でも成功の秘訣は、的確な診断と正確な手術手技につきます。しかしとくにせぼねの場合、診断が容易ではありません。それは痛みという自覚症状だけを治すため手術に臨まなくてはならないことがあるからです。
 50代の女性。1年前から坐骨神経痛がありレントゲンやMRIで調べても“たいしたことはない”と言われ当院に来院しました。仕事かなにかのストレスでしょうと精神安定剤を処方されていました。たしかに脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアはありませんでした。そこで痛みの原因となっている神経の番号を調べる(腰痛治療のウソとホント その1参照)ためにL5神経根に麻酔薬を注入すると痛みは一時的に消失しました。痛みの原因が L5の神経のどこかにあることは間違いなく、その神経が骨や軟骨によって圧迫を受ける可能性のある場所、すなわち4/5の椎間板とL5/1椎間孔の外側の 2箇所を見てみようということになりました。案の定椎間板ヘルニアはなく、その代わり椎間孔の出口に骨盤の骨がくっついており、L5神経根を圧迫していました。
 これがfar out syndromeというみなさんの聞き慣れない疾患を私が始めて意識したきっかけです。日本語はないので私なりに訳すと腰椎椎間孔外側症候群となります。インターネットや文献では稀な疾患ということになっています。果たしてそうでしょうか。私が当院に赴任したのが2009年4月ですが、半年ですでに10例(120例中)もこのような症例を手術しました。知らないから診断できなかっただけで、結構ありふれた疾患なのではないかと最近は坐骨神経痛の鑑別にはこの病気も必ず候補に入れています。“手術は完璧だからそれでも治らないはずはない”と見放されたとか、あげくの果てに“おかしなことを言っているから”と誤診されている方にこのような疾患が見逃されていることもあるのです。

 その1・2は、当院ホームページ内の病院広報誌(第281号・287号)より
ご覧いただけます。                              



世界赤十字デーキャンペーン2010開催☆

 赤十字の創始者アンリー・デュナン(スイス人)の生誕日である5月8日は、「世界赤十字デー」です。日本赤十字社では、この日を中心に全国で赤十字運動月間を展開し、多くの方々に赤十字の思想や活動に対する理解と協力を呼びかけています。
 当院でも、看護の日(5月12日)と合わせてキャンペーンを行いますので、ぜひお気軽にお立ち寄りください。


静岡赤十字病院主催キャンペーン
会 場  静岡赤十字病院 本館1階玄関ロビー
日 時  5 月11日(火)~13日(木)午前9時~午前12時 
              
内 容 
●看護師による「看護・健康相談」「血圧測定」(毎日)
日常生活や療養生活の中での悩みや疑問など、何でもお話ください。

●「栄養士による栄養相談」(11日)
病気に応じた食事について、カロリー計算についてなど、ご相談に応じます。

●「検査技師による検査相談」(12日)
検査値の見方について、自分の受ける検査についてなどご相談ください。

● 健康生活支援講習指導員による「癒しのハンドケア」(12日 10時~)
手の温もりでリラックスしてみませんか。

●「薬剤師による薬相談」(13日 10時~)
ご自分の飲んでいる薬について、薬の飲み方、飲み合わせについてなど、
何でもお聞きください。

     
※実施内容によって開催日・時間が異なりますので、ご承知ください。

ホームページリニューアル

 平成22年5月1日より、当院ホームページをリニューアルいたしました。
 今回も「利用者に優しいホームページ」というコンセプトは継承し、知りたい情報をより
簡単に得られるよう配慮しました。ぜひご覧ください。

 URL:http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp

しずおか日赤メールマガジン 第57号

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静岡赤十字病院 企画課 mail : kikaku@shizuoka-med.jrc.or.jp

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平成22年04月30日発行