しずおか日赤メールマガジン

第54号 平成22年02月01日発行


 みなさま、こんにちは。今日の静岡市はあいにくの雨模様で、冬の寒さが身にしみて感じられる1日となりました。ここ最近、かわりやすいお天気が続いていますので、みなさん体調管理には十分お気をつけください。
 さて、メールマガジン第54号をお届けします。みなさまには引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

目次

1. 今月の病院ニュース
腰痛治療のウソとホント その2

2. インフォメーション
緑茶の効能を活かした看護用品が平成21年度O-CHAパイオニア賞 新技術・新商品開発大賞を受賞

「腰痛治療のウソとホント その2」 整形外科部長 小川 潤

何をやっても治らない腰痛があるのだが・・・誤解されている座り姿勢

 30代の健康そうな男性。MRIで異常はない、痛み止めは効かない、ペインクリニックも効かない、と言って来院されました。いかにも健康そうな男性で痛み止めも効かない癌の痛みは考えにくい。一日中座り仕事とのこと。仕事の際にどのような姿勢をされているかを聞くと痛みの原因はわかりました。
 この方は背もたれの低い固い椅子に、背もたれにもたれず姿勢を正して座っていました。私のお教えした座り方はそれと全く逆のものです。皆さんは椅子と机の高さが腰痛に重大な影響を及ぼすことをご存じですか?パソコンのモニターに体を合わせていませんか?仕事の主人公はあなた、パソコンではありません。
 人間が一番楽な座る姿勢は(図1)のようなものです。大事な点はいくつかあります。1.まず背中は背もたれにもたれている、2.膝が座面より少し高くなっている(つまり総じて背中が丸まっている)、ついでに言えば肩こり予防のため、さらに理想的には、3.頭も何かにもたれている、4.座面や背もたれのクッションは固すぎてはいけない、5.肘掛けがあって腕が何かに乗っかっている。そして最後に、6.視線はわずかに下を向いている。これらがすべて満たされたのが図の姿勢です。そしてかならず1時間に数分でも立ち上がってください。きっとみなさんは逆のことをお考えになっていたのではないでしょうか。してみると従来の椅子にはなかなか良いものがありません。これらをすべて満足する椅子はあることにはありますが、とても高価です。でもあなたが今の仕事を一生の仕事とするなら、是非椅子にはお金を奮発してみてください。健康食品にお金をかけるより余程即効性がある治療です。

腰痛に良い体操は何か?

 筋力トレーニング、腹筋・背筋が大切ですよ、と言われて一生懸命トレーニングに励んだり、マシンに向かっておられる方も多いでしょう。筋力トレーニングは両刃の剣。やり方を誤るとかえって腰痛が出てしまいます。第一、ジムに通うのにお金が必要です。
 ぎっくり腰から回復した方、腰の術後の方、慢性腰痛の方に最初にお勧めしているのはまず歩くことです。ふざけるな、俺は毎日歩いているが腰痛はあるぞ、と言う方もいらっしゃるでしょう。
 ではあなたはどんな歩き方をしていますか?腰痛に良い歩き方とは(図2)のようなものです。そのコツは単純で、1.脚を股関節から折って、2.前を向いて3.姿勢を正し、4.大股で歩くこと、いわゆるモデル歩きです。1.せなかを丸め、2.下を向き、3.足で地面を蹴って進むトボトボ歩きでは何もなりません。太ももの骨(大腿骨)と腰椎の間には大腰筋という腰痛に関連のある大きな筋肉が付いています。太ももを挙げるその筋肉が収縮することによって背筋が鍛えられます。また大股で姿勢を正そうとすると自然に腹筋も緊張して鍛えられます。トボトボ歩きはおもにふくらはぎの筋肉を使って歩く、お年寄りの歩き方でこむら帰りの原因のひとつです。体に近いより大きな筋肉を使って歩くのが腰痛の予防になります。この方法の良いところはお金が全くかからないこと。さて、これを読んだあなた。早速試して見たくなりましたか?(ただし椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症で治療中の方にこの歩き方は勧められません)

レントゲンをなぜ撮るのか

 レントゲンやMRIで異常がないと言われたのになぜ腰痛があるのか。その答えがMRIではなくレントゲンに隠されていることがあります。せぼねとせぼねの間には椎間板という軟骨が前に、椎間関節がうしろにあります。それらが3点の支持構造となって安定し、脊柱(せぼね全体)を構築しています。その1でもお話したようにせぼねは横(体の側面)から見ると曲がっているのが普通です。おさかなの脊柱がまっすぐなのは水中だから。人間の脊柱がこのように湾曲しているのは、重力の影響であり、脊柱が適度にしなって体重を支えようとする最も合理的な構造なのだと推測されます。
 腰椎は前弯といって前凸の弯曲になっており、さらにその下に仙骨という骨盤の骨が続いています(図3)。この仙骨の傾きが腰痛の大きな鍵を握っています。腰椎前弯が強く仙骨が水平に近くなってくる(いわゆる出っ尻)と腰椎と仙骨の接続部の椎間関節に負荷がかかり過ぎて腰痛になる場合もあります。こういう人は姿勢を良くすればするほどせぼねが反って痛くなります。
 腰痛体操はこのように反りすぎたせぼねをゆるやかなそり方に戻す効果があります。腰痛体操の中には腹筋をつける訓練もあります。腹筋が強くなるとおなかの中(腹腔)の圧力が高まります。腹腔の形はラグビーボールに例えられます。腹筋が強くなるとボールの圧が高くなり、脊柱の前で体重を支える助けとなることができます。腹筋が弱くボールの圧力が低ければ支えとはならないので脊柱はたわまざるを得ず、腰痛に繋がっていくのです。

MRI全盛の今、レントゲンは要らないのでは?

 MRIやCTは確かに有用な検査です。これらは寝て撮る検査です。たとえば腰部脊柱管狭窄症は寝ているときに痛くない疾患です。痛くない状態でとっても真の病態を反映しているとは言えませんね。
 脊髄造影という検査があります。脊髄の回りに造影剤というレントゲンに写る薬を注入してからレントゲンを撮影します。注入するときに死ぬほど痛い、ということが患者さんの間でまことしやかにささやかれているようです。本当はそれは誤解ですが、MRIでほとんどのことがわかる時代になぜ痛い思いをさせてまで造影検査をするのかとお思いでしょう。その答えはもうおわかりですね。日頃歩いて痛いときの格好をしてみて始めて病態が再現される訳です。実際に MRIで見つからなかった病気が脊髄造影で発見されたという例は枚挙に暇がありません。
 レントゲンは体を動かしたときの状態を見れるという点でその利用価値がなくなることは当分ないでしょう。

写りすぎのMRI(MRIの欠点)

 中高年の方のせぼねのMRIを撮ると軟骨があちこち出っ張っていてとてもひどく見えることがあります。他でそういうことを言われショックだったと当院に来院される方もいらっしゃいます。
 そういう方に朗報です。MRIは写り過ぎてしまう画像検査なのです。手術を行う我々は手術の前にまずMRIなどで悪い場所の様子をあらかた想像し手術に臨みます。自分の想像通りの術中所見を見つけられれば納得して手術を終了することができ手術が終わる前に治るという確信をもつことができます。納得できる所見がなければ、もう一度場所を確認するか、ときには皮膚を余計に切ってまで他の場所を探すこともあります。手術の部位違えという医療過誤があります。我々にも表には出ないまでも高位ミスを起こすことは・・・正直言ってあるのです。しかし自分の想定した病巣のイメージと合わなければ術中に気がつくことができます。そうしてこういう訓練を繰り返すことで、この程度のMRI所見は手術の必要がない、痛みの原因ではないと判断できるようになります。つまり術中所見からフィードバックしてMRIでの真の病巣を読めるよう訓練を積んでいます。

 その2を初めて読んで、その1も読みたいという方。一部整形外来に残っていますのでお声をかけてください。その3もありますが・・・・・もうたくさんですか?

インフォメーション

緑茶の効能を活かした看護用品が平成21年度O-CHAパイオニア賞 新技術・新商品開発大賞を受賞

 O-CHAパイオニア賞とは、財団法人世界緑茶協会が定める緑茶に係わる学術研究及び緑茶関連産業、文化のさらなる発展に貢献した者に贈られる賞で、この度、5-2病棟の古川睦子看護師が新技術・新商品開発大賞を受賞しました。
 受賞作品である、『まもっ茶手(抜管防止用ミトン型抑制帯)・にぎ茶っ手(手指拘縮予防のための良肢位保持と清潔保持)・ティーキャップ(閉鎖式導尿バックに被せるマント式カバー)』は緑茶の効力を活かした看護用品であり、古川看護師が身近なものからヒントを得て考案しました。

 緑茶の効能である消臭・抗菌・吸湿性を活かすことができるように、茶葉をパルプ100%のコーヒーフィルターに包み、綿100%のリップル綿で作製した袋に入れ、3つの看護用品に使用しました。
★まもっ茶手★
 経管栄養チューブ等の抜去防止のため、せっかく動く上肢をベッドに固定したくないとの思いからうまれたのが「まもっ茶手」です。「鍋つかみ」からヒントを得てできた作品で、チューブの自己抜去はもちろん、ミトンの中で茶袋を握ることにより拘縮予防もできるのが特徴です。現在は商品化もされています。


★にぎ茶っ手★
 手の拘縮と拘縮から引き起こされる皮膚炎の手を見て、市販されている足の癒し用品をヒントに製作したものが手指拘縮予防のための「にぎ茶っ手」です。緑茶の効能である消臭、抗菌、吸湿性が患者さんの手指の汗を吸収し、自然な手の形(良肢位)を保つために役立っています。



★ティーキャップ★
 尿が人目に触れない、臭わないなど患者さんの羞恥心や不快感を軽減できればという思いから「ティーキャップ」を製作しました。これは、子どもの水泳用タオルからヒントを得たもので、内側に茶袋を入れることで消臭効果も期待できます。

 静岡名産の緑茶が湿潤防止や消臭など看護の分野でも思わぬ効果をうみました。これは、患者さんが安全・安楽に療養生活を送れるようにとの思いから、看護師が日々の業務の中で生みだしたアイデアを形にしていくことで実現したものです。
 古川看護師は、「思いがけず賞を受賞することができて大変光栄。自分の思いを形にしていくにあたり、多くの方に協力してもらった。緑茶は普段から身近にあるものなので、退院後も継続して使っていただければ嬉しい。」と受賞の喜びを語ってくれました。

しずおか日赤メールマガジン 第54号

メールアドレスの変更、配信解除  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/about/mailmag/

このメールマガジンに対するご意見・お問合せは
静岡赤十字病院 企画課 mail : kikaku@shizuoka-med.jrc.or.jp

当メールの全文、または一部の無断転載および再配布を禁じます。
編集・発行 : 静岡赤十字病院  http://www.shizuoka-med.jrc.or.jp/
平成22年02月01日発行