椎間孔狭窄による痛み

適切な初期診断が重要!「椎間孔狭窄」による痛み

身近な悩みのひとつ、腰痛。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などに加え、原因のわからない痛みを突きとめるヒントとして最近注目されているのが「椎間孔狭窄(ついかんこうきょうさく)」。 脊椎センター長の篠崎医師に詳しいお話を伺います。

整形外科 脊椎センター長

篠崎 義雄 医師

知的な表情の中で時折見せるユーモアが楽しい篠崎先生。2010年より当院着任、2020年4月より脊椎センター長として脊椎脊髄疾患の治療にあたる。家庭では一男一女の良き父親。栃木県出身。

教えてドクターQ&A

椎間孔狭窄とはどんな疾患?
椎間孔とは脊椎の左右外側にある神経の出口のこと。出口が狭くなることで神経が圧迫され、痛みやしびれといった症状を起こすのが椎間孔狭窄です。腰椎以外に頚椎で起こることもあって、その場合は手や腕に症状が起こります。ただし加齢に伴い脊柱管や椎間孔が変形し、神経の通り道がある程度狭くなっていくのは多くの高齢者に見られること。画像上で狭窄が見られても、症状がなければ治療の必要はありません。
どのような治療を行いますか?
まずは生活に支障がないよう痛みを和らげ、進行をくいとめることが優先されます。基本はブロック注射や薬物療法などの保存療法。手術を行うかどうかは、患者さんそれぞれの症状や要望、ライフスタイルなどに合わせて相談しながら決定します。
予防する方法はありますか?
椎間孔狭窄は加齢に伴う骨の変形や靭帯の肥大などによって生じるため、残念ながら疾患そのものを予防することはできません。しかし早い段階で痛みの原因がわかれば、適切な治療で痛みを軽減できる可能性があります。

これまで見逃されてきた「椎間孔狭窄」という疾患

つらい腰痛や下肢痛、しびれを起こす疾患としてしばしば耳にするのが、飛び出した椎間板が神経を圧迫する「椎間板ヘルニア」や、加齢とともに脊柱管が狭くなる「脊柱管狭窄症」。どちらも一度は聞いたことがある言葉ですよね。では、「椎間孔狭窄」という疾患についてはいかがでしょうか。整形外科医でもその存在を知らない、治療経験がない医師もいますし、あるいはその存在に懐疑的な医師もいます。
人間の腰椎は5つの椎骨により構成されており、椎骨の中心にあるのが脊柱管、椎骨と椎骨の間にある外側の“スキマ”が椎間孔です。脊柱管を通る神経の本幹から枝分かれした神経は、椎間孔を通って下肢につながっていくのですが、加齢とともにこの椎間孔が狭くなり、中を通る神経の枝を圧迫して痛みやしびれを起こすのが椎間孔狭窄です(図)。
椎間孔狭窄は脊柱管狭窄症とは全く異なる疾患なのですが、かつては画像による診断が難しかったこともあり、ほとんど注目されてきませんでした。当院ではこの疾患の存在にいち早く気づき、10年ほど前から診断法や治療法を研究し、整形外科学会でも報告してきました。加齢に伴う腰椎疾患の約10%を占めるとも報告されており、その見逃しや脊柱管狭窄症との誤認が手術後の症状残存の一因になることもわかってきています。

専門医の確実な初期診断、適切な治療が重要

脊柱管狭窄症に特徴的な症状として間欠跛行(かんけつはこう)が挙げられます。間欠跛行とは、しばらく歩くと下肢痛やしびれが出て歩行困難となりますが、少し休むと軽快し再び歩けるようになるというもの。これに対して椎間孔狭窄では、歩行をはじめた時からすでに下肢痛やしびれが出現することが多いです。また激しい痛みが伴うことが多いことなども特徴です。しかし実際には、脊柱管狭窄症と椎間孔狭窄の両方が同時に発生するような場合もあり、症状だけから見分けるのは困難です。またMRIなどで画像上狭窄が認められても痛みなどの症状が出ないケースもあり、さらに判断を難しくしています。

当院を受診される患者様の中には「他の病院で手術を受けたけれど痛みがとれない」「痛みがあるのにMRIで何もないと言われた」と話す方が少なくなく、そうした中に椎間孔狭窄が見逃されている症例が存在します。私たちは常にこの疾患を念頭におき、初期診断を確実に行うことで、適切な治療を提供できるよう心がけています。また当院では、脊椎手術後の患者さんひとりひとりが十分なフォローを受けられるよう、2020年4月に脊椎術後外来を開設。患者様が不安なく治療を受けられるよう、治療方針決定から手術後のアフターケアまで責任を持って行なっています。腰痛や下肢痛、しびれが続いてお悩みの方は、一度当院脊椎センターの受診をお勧めします。