しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog

第171号 令和元年11月01日発行

2019年11月1日

秋冷を肌で感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
11月9日から15日の7日間、令和元年秋季全国火災予防運動が実施されます。空気が乾燥し火災が多く発生する事と、消防機関への緊急通報である119番と数字の語呂合わせでこの日程が決められているそうです。
この運動は毎年実施されており、消防庁が標語を募集しています。今年度は「ひとつずつ いいね!で確認 火の用心」です。火災につながる習慣に気を付け、一人ひとり、ひとつずつ防災につとめていただきたいです。
それでは、メールマガジン第171号をお届けいたします。

胃癌を防ぐ、見つける、治療する 胃癌の原因の99%はピロリ菌!(2)

消化器内科 部長 魚谷 貴洋医師 

あなたも持っているかも?生涯続くピロリ菌感染

1983年、オーストラリアの医師ウォーレンとマーシャルにより発見されたピロリ菌(図1)。二人はこの菌が胃粘膜に感染することで胃炎(ピロリ菌感染胃炎)を引きおこすことを突きとめました。この発見は消化器病学に大きな変革をもたらすもので、彼らは2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
ピロリ菌感染は乳幼児期に成立して慢性持続感染に至り、除菌しない限り生涯にわたって持続します。ピロリ菌に感染していてもほとんどの方は自覚症状がなく、自分の感染に気づきません。感染者は必ずピロリ感染胃炎を発症しますし、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍など様々な上部消化管疾患を併発します(図2)。また近年では消化管以外の疾患との関連も指摘されています。
日本でのピロリ菌感染率は高齢者ほど高く、例えば若年者では10%程度ですが、50歳台では40-50%と決して低い数字とは言えません。そこで有効とされるのがピロリ菌の除菌治療。除菌することで胃粘膜傷害が改善し、様々な関連疾患の予防が期待されます。その一つが胃癌です。

胃癌の予防と早期治療に除菌治療が効果を発揮!

日本は先進国の中でも最も胃癌の多い国として知られています。ピロリ菌感染者の胃癌のリスクは未感染者の15~20倍以上と考えられていますが、除菌治療をすればそのリスクを1/3~1/2まで抑えられます。ただし除菌後も胃癌のリスクが全くなくなるわけではないので(図3)胃カメラによる定期的な経過観察は必須です。
一方、胃癌の治療法も近年変化しています。胃癌は胃壁の最も内側の粘膜から発生して徐々に広がっていきますが、癌が浅い層に留まっている段階であればリンパ節転移することはほとんどありません。こうした早期胃癌に対しては病変部のみを内視鏡で切除すれば根治可能、つまり胃を温存したままで治療ができるのです。
勿論、内視鏡治療が行えるのはあくまでもリンパ節転移のない早期胃癌だけ。深部まで浸潤した胃癌やリンパ節転移をきたした胃癌は、従来通り外科治療や抗癌剤が必要です。しかし近年では内視鏡治療の対象が大きく広がり、以前では考えられなかったような病変まで治療できるようになっています。
胃癌の99%以上はピロリ菌が原因(※)。従って、まずはピロリ菌感染の有無を知ること、感染していた場合はしっかりとピロリ菌除菌療法を受け、除菌後も経過観察を受けること。こうすることで、仮に胃癌を発症したとしても、早期に治療することができるのです。
※出典:認定NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構編『胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル』南山堂

ハートラちゃんの絵本が届きました!

日本赤十字社の公式マスコットキャラクター「ハートラちゃん」を主人公とした絵本「ハートラちゃんのおはなし」が日本赤十字社静岡県支部から寄贈されました。
ハートラちゃんのおはなしは常葉大学の学生さんに制作して頂いたもので、子どもたちへ思いやりの大切さを伝えようという内容を、ポップで可愛らしい絵を通して小さなお子さんにも楽しんで頂けるかと思います。
現在この絵本は静岡赤十字病院の小児科外来、産婦人科外来に設置されています。是非ご覧になって下さい!

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